スギ花粉が入っている健康食品を食べるか飲んで、危篤になった方がいると聞きました。舌下減感作療法をやっていた人ではないのでしょうか。
スギ花粉が入っている健康食品を食べるか飲んで、危篤になった方がいると聞きました。舌下減感作療法をやっていた人ではないのでしょうか。
その事件が起こったのは2007年の二月のことです。自宅で、スギ花粉が入っているというカプセルをのんだあとテニスをした花粉症の女性が、急に呼吸困難を起こして倒れました。重いアナフィラキシーを起こしたと思われ、一時は生命の危険さえ心配されたほどでした。
報告をうけた厚生労働省は、四月、スギ花粉を含んでいるドリンクや飴などの「健康食品」をつくっているメーカーに対して、販売の際には、パッケージに、スギ花粉を含んでいることだけでなく、「スギ花粉症の方が摂取した場合、重篤なアレルギー症状を引き起こす可能性がある」
旨の注意を明記すること、広告やパッケージに、花粉症に効果があると受け取られるような文言をつけないこと、つけた場合は薬事法違反になるから販売中止や回収などを行なうという通達を出しました。
ですから、いま、花粉症がよくなるとか軽くなるという宣伝文句のついた、スギ花粉エキス入りの食品はないはずです。
スギ花粉入りの「健康食品」には気をつけてください
とはいえ、この事件は、多くの教訓をふくんでいます。一つは、いくら簡便な方法とはいえ、医師の目がまったく届かないところで、アレルギーの原因物質を摂取するのは危険だということです。
注射での減感作療法では、毎回、治療をうけたあとしばらく、患者さんは私たちスタッフの近くで休んでいただくし、どのような副反応が起きるかという説明もきちんと行ない、患者さんにしっかり納得していただいて治療にあたっています。舌下減感作療法でも、説明は勿論、最初は
必ず口の中の反応をみますので、通信販売のカプセルを、ただ飲むようなものではありません。
また、カプセルに入っているスギ花粉エキスの純度と濃度が、どこまできちんと管理できていたかも疑問です。私たちがつかう標準化スギ花粉エキスは、きちんと濃度管理されたものですが、そのかたちになるまで、かなりの年月がかかりました。スギ花粉のエキスといっても、スギの花粉を集めて、簡単につくれるようなものではないのです。
一般論になりますが、いわゆる健康食品として世間に流通しているものには、製品の規格や基準のないものが多くありますし、同じメーカーの製品でも、その含有成分が全て均一かどうかは分かりません。成分表示のないもの、成分表示はあっても、肝心の成分の含量が記載されていないものなども多く、これまで使っていてなんにも起こらなかった製品でも、健康被害が起こる可能性があるのです。
私たちのところで、今までずっと事故なく減感作療法が続けられてきたのも、減感作療法のメリットだけでなく、起こりうるあらゆるデメリットを患者さんに伝え、よく理解していただいているからです。舌下減感作療法が在宅でもできることは間違いありませんが、そのときでも、医師の目と患者さんのインフォームドコンセントは欠かせません。
これからの医療では、患者さん一人ひとりの「自己責任」と「理解」が重要になってきます。医療費削減のため、医家向けの薬剤がどんどん町の薬局で手に入るようになり、患者さんが自分で自分の健康を管理する「セルフメディケーション」の場面がふえていくからです。いくらカプセルに入っていたり、錠剤になっていたとしても、健康食品は「食品」です。医療に使うものではないことは、よく認識しておいてください。