新しい減感作療法について教えてください

注射が苦手な私に、友人が、スギのエキスを口から入れる減感作療法もあるようだと教えてくれました。どういうものなのでしようか。いいものなら、すぐやりたいのですが、それは可能なのでしようか。

痛みや副作用もなく、治療期間も短い、今までの欠点を改善した治療法です

お友だちが教えてくれた、口からスギ花粉エキスを入れる療法は、「舌下減感作療法」といいます。欧米ではすでにイネ科の花粉症などに対して普及している方法で、WHOも1998年に治療法の一つとして推奨し、それを受けて、日本でも私のところや千葉大学などで、臨床試験を
始めている最中です。結果もまずまずで、2012年ごろには認可されるでしょう。ですから、今すぐというわけにはいきませんが、しばらくお待ちくだされば、大丈夫、うけられます。(SLITという名前で、やっているクリニックがありますが、保険がきかない現在、自由診療となっています。その費用は施設によって違っていて、毎月1万8千円~2万円くらいかかるそうです)

従来の減感作療法は、第2章でお話ししたように、アレルゲンのエキスとグリセリンを混ぜた標準エキスを薄めたものを、注射で徐々に増量し、濃度も濃くしながら免疫力をつけていく方法です。期間がかかる、とくに通院回数が多くなること、注射なので痛みがあること、アナフィラ
キシーなどアレルギー発作が起こる危険があることなどがあり、なかなか普及しませんでした。

しかし、根治療法であることは確かですから、花粉症の成り立ち、それに関わるリンパ球や、アレルギー細胞などが出す症状の原因物質のことが少しずつわかるにつれて、さまざまな方向から、従来の減感作療法を改善する方法が提案されるようになりました。

一つは、アレルゲンを体に入れるルートを変えようという方向、もう一つは入れるアレルゲンを工夫しようという方向で、舌下減感作療法は、そのうちのルート変更案の代表選手です。

エキスをしま世たパンの切れ端を口に含みます

方法はきわめて簡単です。1日1回、パンの切れ端に標準のスギ花粉エキスをしみこませ、そのまま2分ほど、口の中でふくんでいてもらいます。2分か過ぎれば、パンを出してもいいし、そのまま飲み込んでもかまいません。いまは1ヵ月に1回、通院していただいていますが、自宅
でできる療法です。舌下というのは口にふくむという意味で、むりに舌を持ちあげて、その裏側にいれる必要はありません。

漆職人さんたちは、以前からかぶれるのを防ぐために、弟子人りしてきた新人に、漆をうすめて飲ませていました。こうすると、ふつうなら起こるアレルギー反応が起こらず、結果として漆にかぶれなくなるからです。経口免疫トレランスといいますが、お子さんに多い卵アレルギーも、少しずつ食べていくという、似た方法で治ります。

ですから、注射によるスギの減感作療法に効果があるとわかったあと、「のむ」方法はどうかと考えた研究者は、一人ではありません。ところが、「のむ」減感作療法は治療の主流にはなりませんでした。というのも、スギ花粉エキスをのんでも、期待通りの効果が上がらなかったから
です。

舌下減感作療法は「のむ」のではありません。口に「ふくむ」のです。時間にして2分足らずのわずかな違いですが、効果の違いはてきめんです。なぜなのでしょう。

風邪などをひくと、よく首のリンパ節が腫れますね。のどには左右の扁桃があり、さらに首の周りにはたくさんのリンパ節(体内のリンパ節の4割近く)があって、そこには、細菌をつかまえるリンパ球、なかでも樹状細胞という捕食細胞がたくさんいて、細菌を効率よく捕まえては、つぎつぎに始末しています。その戦いのために、しばしばリンパ節が腫れますが、おなじように、入ってきたスギ花粉エキスも異物ですから、口に含んでいるうちに、粘膜からしみこんだものを、樹状細胞が細菌同様に捕食して、効果的に免疫ができていくのです。

卵アレルギーが「のむ」のとおなじ、「食べる」ことで効いたのは、そのアレルギー反応が、腸管の粘膜で吸収されて起こっているからです。しかし、花粉症の症状のほとんどは、首から上の、鼻や目の粘膜で起こります。それなら、そこに近いリンパ節を利用して免疫をつけたほうが
合理的です。というわけで、スギ花粉エキスを一定時間、口の中にふくんでもらうようにしたのです。

すると、パンからしみだしたスギ花粉エキスが、じわじわと口の中の粘膜から吸収されて、扁桃や首のまわりにたくさんあるリンパ節に入ります。これが大事なことで、「のむ」場合は一瞬でのどを通過しますから、首のまわりのリンパ節がまったく刺激されなかったのです。

パンは口の中に含んでいてもらうための手段ですから、別にパンである必要はありません。ただ、いろいろなことを考えると、いい方法だと思います。ちなみにスギ花粉エキスにはグリセリンが入っていて、甘く感じ、口に含むのは苦痛ではありません。

痛みもなく時間もかからない、それでいて有効率は80パーセントも

減感作療法を始める前にはしっかりと検査をしましたが、舌下減感作療法に特別な検査はありません。必要なことは、スギ花粉症であることを証明する検査だけです。そして、スギ花粉エキスを薄いものからだんだん濃くしていくのは、注射による減感作療法とおなじですが、注射のほうは患者さんごとに許容の閥値をしらべ、対応を考えて、濃さや間隔を変えて行なうのに対し、舌下では、どの患者さんにも、おなじスケジュールで濃くしていくところが違います。アナフィラキシーを起こしませんから、どの患者さんでもおなじスケジュールで大丈夫なのです。

具体的にいうと、私たちのところでは、まず2JAUという濃度のスギ花粉エキスを1滴(O・05ミリリットル)、パンにしみこませたものを口に含んでもらいます。これを毎日1回、下の表のように量をふやしながら1週間つづけたあと、次の週は20JAU、そのつぎの週が200JAU、最後の4週目は2000TJAUと濃くしていって、あとは、維持量である2000JAUの濃度の20滴投与をつづけることになります。そして、「維持量」
に達したあとは、季節的なことも考えに入れながら(花粉が飛ぶ季節には、患者さんの反応が強くなるので)、口に含む回数を週に2回から週にI回、そして2週間に1回と間隔を広げていって、それを1~2年間つづけます。この間は、なにか異常があったときはもちろん、様子をお聞
きしたり、エキスの補充のために、定期的に1ヵ月にI回、病院へ来ていただきます。

この方法は、維持量に達するまでの期間が短く、通院回数もずっと少ないこと、痛くないことが大きなメリットで、お子さんや高齢の方も気楽にうけていただけます。

また、特別な検査もいらないし、全ての患者さんがまったくおなじスケジュールでいいというのも、いいことです。副作用も、入によって口にかゆみを感じる程度で、アナフィラキシーも起こりませんから、どこの医院でもできますし、将来は在宅でも可能になるでしょう。それでいて、有効率はおよそ80パーセント、この数字は注射にくらべて、同じか、少し弱いくらいですから、欧米で普及したのは、きわめて当然のことでした。

注射による減感作療法との違い

注射による減感作療法の反応は、人によって大きくちがいます。激しい反応が出る人もあれば、出ない人もあります。ですから、安全を考えて、その人の「闘値」を測り、反応が出ない濃度からスタートし、反応の具合をみながら、徐々にゆっくり濃くしていきます。感作療法に特別な検査はありません。必要なことは、スギ花粉症であることを証明する検査だけです。そして、スギ花粉エキスを薄いものからだんだん濃くしていくのは、注射による減感作療法とおなじですが、注射のほうは患者さんごとに許容の閥値をしらべ、対応を考えて、濃さや間隔を変えて行なうのに対し、舌下では、どの患者さんにも、おなじスケジュールで濃くしていくところが違います。アナフィラキシーを起こしませんから、どの患者さんでもおなじスケジュールで大丈夫なのです。

具体的にいうと、私たちのところでは、まず2JAUという濃度のスギ花粉エキスを1滴(0.05ミリリットル)、パンにしみこませたものを口に含んでもらいます。これを毎日I回、下の表のように量をふやしながら1週間つづけたあと、次の週は20JAU、そのつぎの週が200JAU、最後の4週目は2000TJAUと濃くしていって、あとは、維持量である2000JAUの濃度の20滴投与をつづけることになります。そして、「維持量」に達したあとは、季節的なことも考えに入れながら(花粉が飛ぶ季節には、患者さんの反応が強くなるので)、口に含む回数を週に2回から週にI回、そして2週間に1回と間隔を広げていって、それを1~2年間つづけます。この間は、なにか異常があったときはもちろん、様子をお聞きしたり、エキスの補充のために、定期的に1ヵ月に1回、病院へ来ていただきます。

この方法は、維持量に達するまでの期間が短く、通院回数もずっと少ないこと、痛くないことが大きなメリットで、お子さんや高齢の方も気楽にうけていただけます。

また、特別な検査もいらないし、全ての患者さんがまったくおなじスケジュールでいいというのも、いいことです。副作用も、入によって口にかゆみを感じる程度で、アナフィラキシーも起こりませんから、どこの医院でもできますし、将来は在宅でも可能になるでしょう。それでいて、
有効率はおよそ80パーセント、この数字は注射にくらべて、同じか、少し弱いくらいですから、欧米で普及したのは、きわめて当然のことでした。

注射による減感作療法との違い

注射による減感作療法の反応は、人によって大きくちがいます。激しい反応が出る人もあれば、出ない人もあります。ですから、安全を考えて、その人の「闘値」を測り、反応が出ない濃度からスタートし、反応の具合をみながら、徐々にゆっくり濃くしていきます。

そして、エキスは皮膚に注射しますから、皮膚に注射したときの反応を「閾値」を決める目安にしました。ですから、この閾値は、花粉症やアレルギー鼻炎の程度を知るものでもなければ、鼻や目の症状が、出る、出ないという目安でもありません。まったく減感作療法のためだけの数値です。

一方、舌下減感作療法は、皮膚をつかいません。エキスが吸収されるのは口の中の粘膜ですから、皮膚反応で「閾値」をみても、意味がありません。ですから、従来のような「閾値」の検査は必要がないのです。

気になる費用ですが、今の試算では、保険が適用されても、月5000円ほどになります。ただ、このままでは少し費用がかさむので、もう少し安くするような工夫を、いろいろ考えているところです。実用化されるときには、多少安くできるでしょう。

結論

というわけで、舌下減感作療法は、あなたの未来と花粉症治療の現場を変える画期的な方法です。これまで敷居が高かった「減感作療法」が、これほど身近で手軽になるなど、信じられないくらいです。今までためらっていたり、仕事の都合であきらめていた方も、ぜひご一考ください。いまのところ、エキスはスギ花粉だけですが、将来はハウスダストも考えられています。

《鼻からの減感作療法》

海外では、鼻から減感作療法をやっているところもあります。クロモグリク酸ナトリウムという抗アレルギー薬を鼻に噴霧してから、特定の抗原物質を入れていきます。すると、最初は症状が出ますが、くりかえしやっていくうちに症状がなくなるというものです。ただ、日本ではやっている施設がなく、効果も実証されていません。



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